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定額減税を分かりやすく 10の疑問

3つのポイント

  1. 2024年6月の給与支払いから1人当たり4万円が減税

  2. 定額減税の実施に当たっては企業負担増との指摘も

  3. わかりにくい仕組みや実務で生じる負担を整理した


 政府は所得税法などを改正し、所得税・個人住民税について定額減税の実施を決めた。早ければ、2024年6月の給与支払いから扶養家族も含め1人当たり4万円が減税される。


 しかし、定額減税の実施に当たっては、給与明細に減税額を記載する必要があるなど、企業に一定の負担が生じることになる。定額減税の仕組みや実務で生じる負担など、知っておきたい10のことをまとめた。


① なぜ今、定額減税が実施されるのか?

② 誰が定額減税の対象か。所得が2000万円を超える人は?

③ 所得がない人はどうなる?

④ 6月以降、どのように減税されていくのか?

⑤ 定額減税による、ふるさと納税の上限額などへの影響は?

⑥ 定額減税の給与明細への記載など、企業に増える負担は?

⑦ 企業システムへの影響や追加コストは?

⑧ 定額減税に対応しない企業はどうなるのか?

⑨ なぜ現金給付ではなく定額減税?25年も実施される?

⑩ 過去に同様の定額減税はあったのか?


① なぜ今、定額減税が実施されるのか?

 定額減税とは、所得税などから一定の税額が控除される制度。今回の定額減税では、24年分の所得税から1人当たり3万円、住民税から1人当たり1万円の合計4万円が控除される。物価高に賃金上昇が追いついていない現状を踏まえ、国民負担を緩和することが目的だ。


 政府は「2024年に物価高を上回る所得」の実現を掲げ、デフレからの完全脱却を目指している。春季労使交渉(春闘)による賃上げが反映される6月に定額減税を行うことで、手取りの増加をより実感してもらうことも狙いの1つとしている。


② 誰が定額減税の対象か。年収が2000万円を超える人は?

 所得税・住民税の納税者とその扶養家族(年収103万円以下)が減税の対象となる。ただし、合計所得が1805万円を超える人は給付の対象外だ。


 退職金や投資などによる収益で年末までに年収2000万円、所得1805万円を超えてしまった場合は注意が必要だ。定額減税を受けたとしても、年末調整や確定申告で最終的な年間の所得税額と定額減税額との精算を行わなければならない。


③ 所得がない人はどうなる?

 生活保護受給者など住民税が非課税の世帯は給付済みの3万円に加えて7万円が配られる。住民税の均等割のみを納める世帯には10万円が給付される。


 このほか、納税額によっては減税しきれないケースもある。その場合は差額が1万円単位で切り上げて支給される。例えば減税額が3万5000円にとどまった単身世帯の人であれば、差し引けなかった5000円を切り上げた1万円が給付される。減税しきれない所得層は約3200万人いるとされる。


④ 6月以降、どのように減税されていくのか?

 1人当たりの定額減税は所得税3万円、住民税からは1万円を差し引く。扶養家族も対象になるので、例えば夫婦と子ども2人の4人世帯(扶養している家族が3人)であれば計16万円が減税される。


 所得税については、一度に減税しきれない人は、額に達するまで数カ月にわたって減税が続く。前述の4人世帯で16万円減税されるケースで考えてみよう。扶養者の24年6月の月給にかかる所得税が1万円、同月に支給された夏のボーナスにかかる所得税が9万円だとすると、6月は10万円が減税される。所得税分の減税は12万円なので、残りは2万円。月給が変わらない場合は7月、8月に1万円ずつ減税されると仮定できる。


 住民税については、6月分は徴収されずにゼロとなる。その後、7月から25年5月にかけて均等に減税分を引いた税額が天引きされる。


 例えば、4人世帯で住民税が年間9万5000円だったとする。6月は住民税が徴収されず、7月以降、減税分4万円を差し引いた5万5000円を11カ月で割った5000円が25年5月まで毎月徴収されるという計算だ。なお、ここで挙げた月給や税額は、考え方を理解するための仮定のものだ。


⑤ 定額減税による、ふるさと納税の上限額などへの影響は?

 ふるさと納税を実施した人は、住民税を前払いしていることになる。控除の上限額についても、減税前の所得額を基に算出する。そのため、定額減税による影響が生じることはない。


⑥ 定額減税の給与明細への記載など、企業に増える負担は?

 政府は企業が所得税の減税額について給与明細に明記することを義務づけている。社員ごとに減税額は異なるため、担当者には事務的な負担が生じる。PwC税理士法人によると、給与計算システムなどを利用している場合でも、以下の追加業務が生じうるという。


 ・制度を理解した上で、社内への周知、説明、問い合わせ対応

 ・6月給与計算前の減税対象者と減税額(扶養人数)の確認

 ・月次減税額、定額減税額、定額減税未済額などの計算チェック

 ・従業員それぞれの定額減税に関する適用条件をまとめた帳簿の作成


 給与計算システムを導入していない、もしくはシステムが定額減税に対応できない場合は、上述の作業に加え、経理担当者が控除額を計算する手間もかかる。


 なお、この夏に中途採用者を受け入れる企業は新入社員の前職での減税実績などを正確に把握する必要がある。マネーフォワードPeople Forward本部人事労務部の兼松大樹部長は、「情報が不十分だと前職の会社に電話確認が必要なケースも出てくるだろう」と話している。


⑦ 企業システムへの影響や追加コストは?

 クラウド型の会計システムを使用する場合、ソフトを供給するIT(情報技術)ベンダー(システム開発会社)側でシステム改修などを行うため、企業(利用者)側の作業はほとんど不要だ。オンプレミス(自社所有)型もシステム改修などはITベンダー側が行うが、利用者側でのアップデートが必要になる可能性がある。


 ただし、独自の会計システムを構築している場合は、新たに定額減税に関する項目を作成するといった改修コストがかかる可能性がある。


⑧ 定額減税に対応しない企業はどうなるのか?

 林芳正官房長官が5月末の記者会見で労働基準法違反になり得るという見解を示している。また、年末調整のみの対応も労基法に抵触する恐れがある。


 労基法24条(賃金の支払)によると、賃金は法令に別段の定めがある場合に賃金の一部を控除して支払える。だが、定額減税が6月から反映されない場合、本来支払われるべき額よりも少ない給与となってしまう。厚生労働省の担当者は「(そうしたケースが確認された場合)まずは是正指導して、自主的な改善を促すことになる」との見解を示しているが、悪質なケースは30万円以下の罰金を労働基準監督署から科される可能性もある。


 企業にとっては12月の年末調整などで対応する方が負担は少ないと見られるが、こうした対応は認められないようだ。


⑨ なぜ現金給付ではなく定額減税?25年も実施される?

 政府は国民の負担を緩和するには、手取り収入を直接的に下支えする所得税・個人住民税の減税が最も望ましいことを理由に挙げる。岸田文雄首相は、「わかりやすく所得税・住民税という形でお返しする、これが国民生活を支える上で重要」と強調している。


 自民党内では木原誠二幹事長代理が5月26日に民放番組で「仮に物価の状況が改善せず、またデフレに戻るのであれば、来年だって考えないといけない」などと発言していたが、翌27日に鈴木俊一財務相が参院決算委員会で「複数年度にわたって実施することは考えていない」と述べている。


 なお、与党が23年12月に発表している24年度の税制改正大綱には「今後、賃金、物価等の状況を勘案し、必要があると認めるときは、所要の家計支援の措置を検討する」と明記されている。


⑩ 過去に同様の定額減税はあったのか?

 1970年代には、既に徴収された税金を払い戻す「戻し減税」が複数回実施された。90年代には98年の橋本龍太郎内閣が「定額減税」を実施した。ちなみにこの時も、減税について給与明細に明記することが義務づけられていたようだ。


 99年には小渕恵三内閣が一律で所得税額を20%減らす「定率減税」(住民税15%の減税と合わせて上限29万円)を行った。こちらは2006年に減税の割合が引き下げられ、07年の全廃まで継続した。


 08年には福田康夫内閣が総合経済政策で「定額減税の年度内実施」を盛り込んだが、直後に福田首相が退陣を表明して実施されなかった。

 

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